目的:5N ぐらいの引っ張り荷重に耐えられる減速機構を安く作る
人を5cm/s^2ぐらいで引っ張りたいので、このくらいの力がほしい。余裕をもって 10N とかそれくらいはほしいところ。耐久性は、工業製品ではなくてアート作品なのでそれほどなくてよい。
モーター選定:5000円以内でドライバとモーター本体をそろえたい
モーターのトルクの単位は Nm だが、これは1mの半径のところに 1N のちからをかけられるということ。つまり、1Nm のモーターを 10 cm のところで動かせば 10N は出せる。
Nema17 というのが3Dプリンタ等でよく使われる。ボールネジ等で減速して使われるのがふつうだが、大体 0.5 Nm ぐらいの保持トルクを持っている。ステッピングモーターは回転速度が最適なとき、この保持トルクより少し多めのトルクを出すことができるようなカーブを描く。つまり、実際の引っ張り速度はこれより少し大きいと考えてよい。一方、切削に使うようなCNCはもっとトルクがないと削れないので、もっと大きなモーターか大きなギア比を持ったモーターが使われる。
(タイミングベルトが切削で使われないのは、送りトルクが弱くなってしまうからと、ベルト自体が伸縮するから。安いキットはネジではなく、ベルトで送っているが、ステッピングモーターはかなり高速回転ができるので、その分機構が無駄になっているともいえる。)
最終的に負荷を動かす部分の半径を 5cm とすると、10N 出すためには 0.5Nm のトルクがあればよい。Nema17 のスペックを見ると大体これくらいなので、減速機構はもしかしてなくてもよさそうである。その上位のNema23 だと、2Nm 近くあるので、これを使えば十分なトルクは得られそうだ。
摩擦等で力は小さくなるし、モーターは大きいほうが変化に強くなるので、Nema23 を使うことにする。
減速機構
減速機構は、最初ギアにしようと思ったが、これだけの負荷に耐えられるギアは金属製になってしまう。ギアの場合、負荷がギアの接触面のみを通して伝わるためだ。
一方でプーリーを使うと、ざっくりいってプーリの半分がベルトと接触するため、プーリー自体の強度を弱くできる。プラスチックのギアはあまり大きなものはないが、少なくとも表面がプラスチックになっているプーリーがたくさんあるのはそういう理由だろう。
だが、金属のプーリーは大きな減速を得ようと思うと大型化するが、一般的にあまり売っていないようだ。作るにしても材料費だけでかなり高くなってしまう。たくさん作ろうと思うとお金が足りない。
プラスチックは削りにくいし、エンプラになると金属と同じぐらいの値段になってしまう。ABSレベルでさえ結構高い。
で、少なくとも、大きな方のプーリーは木製でも行けるんじゃないかと考えた。モーターにつける方のタイミングプーリーだけ既製品(4$程度)を購入し、大きな方は木製で表面をウレタン樹脂強化したものを使えば、かなり安くできるし、木を選べば見た目もよくなる。
一番一般的なプーリはXL型というピッチが 5.04mm のものらしいが、1mm のビットであれば割と簡単に削ることができる。1枚1枚は薄くても、数枚重ねれば厚モノは出来る。ネットを漁ってもあまり例が出てこないが、密度の高い木材ならば可能性はあるだろう。
プーリーにつけるシャフト
素人から見ると、プーリーやギア、ベアリングをどうやって軸に固定するのかなかなかわからなかった。いろいろ調べると、磨き丸棒のようなものを使うより、ボルトを使う方法のほうが安上がりっぽい。
ギアやプーリーをシャフトに固定したい場合、一番単純にはボア径と同じシャフトを用意して、芋ねじをつかって留める方法や、キーを埋め込んで固定する方法等、いろんな方法がある。
ボルトをシャフトとして使って、「アジャスター」の一種である、穴付きの座金にナットがくっついたものを使うと、ある程度大きなギアやプーリーをボルトに挟み込んで固定することができる。セットピースを使って挟み込む方法もあるようだが、セットピース自体が高くなるため、これを使うなら高い緩み止めナットをつかったほうがよい。
シャフトの中心とプーリーの中心は、加工精度によってずれが出てしまうが、上のような緩み止めベルトやセットピースを使う方法は、専用の治具を作ると綺麗に芯を出すことができる。治具自体は単にボルトを垂直に立てて、セットしたい部分の中心を合わせるようなものをつくればよい。
あとは、軸受けの部分に適当にベアリングを固定すれば安く減速機構をつくることができるだろう。
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