著作権は帰属するが、無償で使います
企業の「アイデアコンテスト」に必ずあるこの文言の意味を考えよう。自分のアイデアと腕で食っていく意思を持っている人たちにとって意味があると思う。
まず、金銭が発生しないならば著作権は存在しないのと同じである。そもそも著作権自体が金銭の関わる財産権なのに、それを無料で使うというのは認めていないのと同義。ここで言っているのは「人格的著作権」というやつで、説明書の隅っこに「この人のアイデアで作りました」、論文でいうなら Ackknowledgement, Thanks to は書きます、ぐらいの権利である。少なくとも、文面からはそう読み取れる。
モノを実際に作ることに価値がある
スティーブ・ジョブズが「顧客はモノがつくられるまで自分が欲しいものがわからない」という趣旨の名言を残しているが、アイデアと、実際にものを作って運用するまでには大きな隔たりがある。
Ballpool は最初は2週間でプログラミングしたが、それ以降老人ホームに持って行ったり大学で広告に使ったり、海外に販売したり、色んなバリエーションを作ったり、実際に世の中に露出するまでが大変だった。ロシアからの依頼を受けたが結局無駄足に終わったこともある。Shoji Pixels は作るまでに3年かかっているし、大きな作品なので展示するのも大変、それらを自前で賄わなければならない、となると先が思いやられる。
実際にモノを作り、運用することには大きな労力とお金が必要だ。だから、製作、運用に関わる事に価値が有ることは間違いない。とはいえアイデアにも100%価値がある。
アイデアとはモノを作る経験、ビジネスの経験から生まれてくるものであり、いいアイデアはそれらを運用した力によって支えられている。いい仕事をした人間がいい仕事を得られるように、いいアイデアを出して実現した人間がいいアイデアを出せる。経験はアイデアを支える重要な経験だ。
だから、「アイデアを無償で提供する」というのはその人の経験を安売りしていることにほかならない。企業にとってもこのような人の経験こそ本当にほしいはずで、グランプリでもたった数十万、とれなければ無料、というはした金で売っていいものではない。また逆に、無償譲渡されるようなアイデアには価値はない。
アイデアを実現する本当に必要な「実現力」
特許というものはかなりぼんやりしたもので、単に紙の上に書いたアイデアだけでも受理されたりする。だけど、実際にものがあって運用実績のあるもののほうが受理されやすい。それは、「アイデアの実現可能性」と関わっている。
本当に重要なのは、特許ではなく、「アイデア」「製作」「運用」の循環を回していくこと。アイデアはどっかから急に湧いてくるものではない。特許はその結果として勝手についてくる、というものだと考えればいいだろう。
こう考えていくと「アイデア」「実現力」「運用力」は三位一体のものだと気づく。例えば、ある人が何か新しい商品、面白いものを考えついたとしよう。それを作るために数ヶ月、数年努力して、プロトタイプができた。ここまでが「製作」で、「運用」とは綺麗なウェブサイトを作ってKickstarterで資金を調達して量産体制を作り、ビジネスに載せること。
その中から新しいアイデアが生まれることもあるだろうし、顧客からフィードバックを得て商品を改良することもあるだろう。いづれにせよ、モノを作る人にとって、この3つを意識して行動することが大事だ。
もしあなたがアイデアを持っているならば、すぐに行動に移すのが次のステップで、「アイデアのジャンクショップ」に売ることではない。行動に移すための道具ならば廉価で手に入る世の中になったし、その方法はネットにあふれている。
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